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2006年4月28日 (金)

脳科学のSF小説

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プロセス・アイ という小説を読んだ。

著者は脳科学者であり、ソニーコンピュータサイエンス研究所のシニアリサーチャー、東工大大学院の連携教授、そして東京芸術大学の美術解剖学の非常勤講師でもある。

最近はNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」のパーソナリティや、NTV「世界一受けたい授業」のアハ!体験の先生、ご自身のブログ、講演会と色々多方面でご活躍されていて、さらには本の出版も相次ぎ、最近の露出度はかなりのお人である。
養老孟司氏についで今や脳科学では注目の人が小説を書いた、というので楽しみにして読んでみた。

茂木氏から「デザイン原理としてのクオリア」という話を あるセミナーで聴いたのは、2002年冬のことであ る。 セミナー後の懇親会で直接お話をしたのだが、氏は一番クオリアを理解してくれ そうなデザイナーがなかなか理解してくれないもどかしさを嘆いておられたのが印象的だった。ちょうどそのセミナーで、ご自身の経歴について、世の中の現象は全て数式で表せると豪語していたアインシュタイン少年が途中からなぜ哲学を志し、さらに脳科学者と なり、クオリアという存在に気付いたかを分かりやすく話してくれた。
カンタンに言うと、学生時代の彼女に別の彼氏ができてふられたことが世の中、数式で表せないことが存在する、と実感したことに始まると。失礼ながらその事実が知性と愛とテーマにした「プロセス・アイ」の 原点のような気がする。

それを科学と芸術の一致性を証明する意味も込めて、今まで積み上げてきた理論を小説という形を借りて一気に吐露したのではないかと思わせるのです。
それにしても小学生以来の長編とは思えない精緻に計算されたプロット、リズミカルな展開を備えながら、壮大なスケールに昇華された物語である。
キーとなる登場人物の人間関係の描き方は弱いような気もするが、クオリア研究所の描写や創造性支援ツール「ガラテア」など映画化を前提としたような、読み手に次々と映像をイメージさせ、鳴り響くサウンドトラックの豊かな管弦楽を頭の中に鳴り響かせる力を持った豊かで精密な描写は、知性と愛をテーマにしたヴァーグナーの楽劇のようだ。

政治と経済の動きを結びつけたという金融理論「スペラティヴ」、ポセイドンの娘をモチーフにした「ガラテア」など発想もネーミングもいい。
「私が私であることはどういうこと」という根本的な問いを突き詰めていく主人公と人工知能理論「プロセス・アイ」の展開は、SF小説にありがちな既存技術の延長で表現しながら本当にありえそうな未来を予感させちゃうようには描かれていないところに魅力がある。

登場人物の名前は、現存する人物を必ず誰かをもじってるしとか思えず、思わずかんぐりながら苦笑してしまった。ノーベル賞作家の川端康成はともかく、たとえば金城剛は高○剛?、「ガラテア」を設計したゾーン社のドクターレキモトはもう、ソ○ーの○本 さんでしょう。これはご愛嬌。

脳理論、宗教思想、経済原理などが斬新な解釈とともにうまくブレンドされて、読み手に様々な思索を導き出してくれる,
インテリジェンスに楽しめる作品だと思う。

装丁は茂木氏と同年生まれの鈴木成一氏

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