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2008年8月 4日 (月)

旧八幡郵便局

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夏休みを利用して、自家用車で旅に出た。
7時40分、横浜の自宅を中1の次女と二人で出発。
テーマは建築とアートを堪能する。
単に私の行きたい所に行くだけのわがままな計画の決行だ。

次女は関西方面に初の旅行(京都まで行ったことがあるが)をするとうので、日本脳炎の予防接種も受けている。準備万端だ。

東名高速を順調に西に走り、上郷サービスエリアで上郷名物「手作りカレーパン半熟卵入り」なるものをランチに食べる。名神高速八日市ICから一般道を走り、最初の目的地である近江八幡市の市営多賀観光駐車場には、一番暑い時間に到着した。駐車場に車はわずか数台、街を散策する人影もほとんど見かけない。

ここで一番に見学したかったのは電話予約が必要な「ヴォーリズ記念館」である。
月曜休館であることは知っていたが、諸般の事情により日曜出発を月曜に変更したため諦めた。猛暑の中、外観だけをじっくり眺めさせていただいた。
ヴォーリズ建築を最初に意識したのは東京・お茶の水にある大正14年に竣工した「主婦の友社ビル」である。私が知っている「主婦の友社ビル」は1987年に磯崎新氏の設計によってファサードの外形骨格と一部のオーナメントのみが復元されて「お茶の水スクエア」として立替られた現在の姿である。ここに日本初の民間が運営するクラシックの室内楽専門ホールとして「カザルスホール」がオープンした。ホールの独自性(世界初のビオラのための企画「ビオラスペース」を成功させた)と、そのシンプルながら重厚な外観をもつこの建築は私を魅了した。2003年に日本大学がこのお茶の水スクエアとカザルスホールを買収し運営されている。近くにあるアールデコ風な「山の上ホテル(1937年)」が現存するヴォーリズ建築そのものであることを暫くしてから知った。そして6年ほど前、横浜に唯一現存するヴォーリズ建築である「横浜共立学園本校舎(1931年)」の内部に入る機会を得た。「使う人の立場になって設計をする」というヴォーリズ建築の特徴を実感した。その後、北海道への家族旅行の途中で、北見にある「ピアソン記念館(1914年)」を訪ねたり、大阪出張の際は心斎橋の「大丸百貨店(1933年)」をなめ回すように見学したりしてきた。 

ヴォーリズとは、今では誰でも知っている「メンソレータム」の会社を作ったヒトといえば、わかりやすいだろう。熱心なキリスト教徒としての伝道活動とともに社会教育、出版、医療、学校教育などの社会貢献活動を行いながら、それを支えるために建築設計会社や製薬 会社などの企業活動を展開した。建築の設計はアマチュアだったそうだが、アメリカ人建築家の協力を得て海外の 技術を吸収しながら基礎を確立し、住宅を はじめ学校、幼稚園、教会堂、礼拝堂、YMCA、YWCA、病院など1500〜1600件の建築を手がけたと言われる。合理性と簡素さを両立しながらも、日本の風土に馴染んだ親しみやすい様式が多くの人々の共感を呼んでいるのだと思う。2008年は、ヴォーリズが建築設計事務所を開業してからちょうど100年に当たる年なのである。

近江八幡にはヴォーリズ建築が多く現存している。
そのうちの一つ、旧八幡郵便局は現在NPO法人・ヴォーリズ建築保存再生運動「一粒の会」の事務局として、そしてギャラリーとして保存再生活用されながら一般に公開されている。

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1階はほぼ改修が終わっていたが、中庭に出てみるとまだまだ途中であることがわかる様相だ。ギャラリーの店番の方とお話をしながら、2階も見せていただけないかと申し出てみると、こころよく階段の先の扉の鍵を開けてくれた。窓の開いていない2階は、熱気がこもり立っているだけでも汗が滴り落ちるような状況だったが、せっかくのご好意に、資料のパネルやらゆっくりと見せていただいた。それでも床に穴があいていたり、壁が一部崩れたりと、改修はまだまだこれからの様子だ。

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最初の画像は、この2階の奥の扉にあった水晶のドアノブだ。
1階の局長室の扉の紫水晶のドアノブは有名だが、2階のは薄桃色だった。こういうディティールが面白い。

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しばし、1階のサロンで通り抜ける風にあたりながら流れ落ちる汗が収まるのを待ち、朝、自宅で入れた冷たい麦茶を入れた水筒を飲み干した。

このあと、 ヴォーリズ建築第1号である「アンドリュース記念館(旧YMCA会館)(1907年)」の外観を見る。ここは一昨年に再生のための改修工事が行われ、高齢者や障害者などの介護予防拠点施設として蘇っていた。中からは清楚な合唱の声が聞こえてきて、地域住民に親しまれる介護のモデル施設として先導的な役割を既に果たし始めていることが実感できた。

何せ関西は暑いのである。
わしゃわしゃと、クマゼミの合唱も凄い音量で、暑さに輪をかける。
途中、いろいろ道草を食いながらも何とか丹下健三建築のホテルに到着。
夕陽を眺めながら第1日目の旅を終えたのである。

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