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2009年2月22日 (日)

原点に気づく

Dscf3661

子供の習字展? ではありません。

場所は「西千葉」。
昨日、大学の研究室の同窓会があった。その名も「第一講座会」。

受付を済ませるとすぐ横に硯と筆が置いてあり、
スタッフの現役学生さんから「一言」と言われたままに筆を執った書。
学生時代に学んだことから社会人となった今に至るまでの思いを書いたものです。
会場の講義室の一番後ろに貼り出されると結構壮観。

今回のイベントは、助手時代から40年間にわたりその研究室を支えてきた教授が昨年3月に定年退官され、今年1月に後任の教授が着任されたそれぞれのお祝いと報告を兼ねた会ということで、全国、いやいや留学後中国、韓国、台湾、インドネシアの大学で教鞭を執っている人から、現役の学生さんまで100名余が参集した。
場所もホテルの宴会場とかなんとか会館じゃなくて、まさに私たちが学生時代に講義を受けた殺風景で古い講義室。
飲食も主婦5人が運営しているおふくろの味を売りにしたケータリングと留学生による故郷の味というまさに手作り感溢れる趣向だった。

この研究室の源は、芸術と工学の総合という理念を具現化するために設立された九州芸術工科大学の初代学長に栄転された小池新二先生に発する。
ちょうど在学中に小池先生が逝去され、その凄さを何も知らないまま「先生の蔵書を図書館に贈呈することになったから、ご自宅に行って運び出すのを手伝え」と恩師の言われるままに研究室全員で小金井のご自宅を訪問、ものすごい数の本の搬出に汗を流したことが懐かしい。
現在も大学の図書館には「小池文庫」として和書・洋書合わせて7000冊の所蔵図書が保管・公開されているそうだ。

昨日はその小池先生の後任として着任され、7年間在籍された文化人類学の大給(おぎゅう)先生が冒頭に30分の特別講義をされた。
ちょうど入学前に開設された国立民族博物館にご栄転されたので、直接講義を受けたことは無い。大給先生直々に指導を受けた大先輩達も多くいる中で、御年80歳ということで、もう皆さんの前で話すことはないだろうから、今日は「遺言」代りにデザインに関し「言っておきたいことを言います」と矍鑠たる姿勢で熱く語られた。

いまだからこそ響くのかもしれないが、その内容にとても感銘を受けてしまった。この会に参加してよかったと思う瞬間だった。

以下、その要旨を自分のためにもメモしておく。

テーマは「人間再認識のデザイン」
先生は大学で最初に経済学を学び、そこでは「損ー得」と「期待ー不安」の2軸で物事を語れてしまうことに疑問を持ち、心理学を学んだそうだ。そこでは、統計学が主で、「個人が消えてしまっている」ことにまた疑問を持ち、人の精神性を探るために文化人類学を究めたのだった。その方が小池先生に請われて、デザイン概論を講義する立場になった時の話をされた。

要は文化人類学の社会調査を工学部のデザインの分野に持ち込んで、「デザインサーヴェイ」という演習を始めたのだそうだ。その心は、概念を言葉で定義する「西洋文化」に対し、定義がなくとも伝わる茶道のような「東洋文化」にあって、価値観のコンセプトは「話では通じない」から「身体で悟らす」ことを目指したのだと言う。
工学部のデザインで「ユーザーのことを身体で解った人間を育てる」ために始めたのが「デザインサーヴェイ」。今で言う「オブザベーション」だ。

「わかった」ということは「身体で納得すること」。
「デザインサーヴェイ」というのは「相手の心を知ること」
デザイナーの仕事は「心療内科」のようなものです。
人の持つ悩みを解決してあげることですから、とも。

そして、デザインは情報文化の一部を担っているのだから、
中学生なんかに「情報」って何ですか?と聴かれたら応えられなければいけない。
「情報」とは「知りたいこと」「知らせたいこと」。
それをデザイナーは作品としてきちんと表現できなくてはいけない。
今は情報が多すぎて機能していない時代だからこそ、デザインが必要なのです、と。

そして、最後に、「生きていくのには衝撃が必要。その衝撃で明日から生き方が変わるから。階段を上るエネルギーをいつももってください」と締めくくられた。

大給先生にとって人生の7年間でありながら、デザインという全く未知の分野に踏み込んだ衝撃が後の人生にとてつもない影響を与えたのだそうです。

デザインとは異分野の大給先生を連れてきた小池先生の先見の明には、「異花受粉」という考えがあったという。その他にも、人間工学、材料工学といった専門家を引っ張ってきて、現在の礎を築いたのだ。デザインの本質は人を中心とした「広大な視野と十分な科学的教養をもつ」ことだという原点は、今のデザイン教育にも通じる。

学生時代、もっと学んでおけばよかった と思うのはいつの時代の人も同じか。

関連記事:Information Design!? 工業意匠学科教育方針(昭和24年)

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