第3回情報デザインフォーラム
昨日は第3回情報デザインフォーラムに参加した。
目玉は ソニーでクルクルピ!の予測文字変換POboxを開発した増井俊之さんのお話。
テーマは「ユビキタス時代のユーザーインターフェース」だった。
主旨は「Webサービス」と「Ubicomp」は近々融合するはず。それは、ハードの敷居もソフトの敷居も下がってきているから。「ユビキタス」は「ユニバーサルデザイン」と同義であり、「いつでも、どこでも、誰でも」ということは、人間の能力を強化するために、直感的な操作を可能にすることだから。
ポイントは「直感的なシステムを実現する基盤技術」である小型コンピュータや、ネットワークはもうあるので、あとは「操作の良さ」の「アイディア」だけだ、ということだった。それには、「ネタ」ではなく、「発明」が必要だと。
我が家の初代ケータイはクルクルピ!が気に入って、私も妻も娘もソニーだったが、ゲームが出来ないというキャリア(ユーザー?)の声に屈し、ソニーも十字キー変換に迎合せざるを得なかったという歴史がある。画期的だったPOboxも台無しだった。
この話、結構 重要な意味がある。
増井さんとは、産総研時代に面識はあるのだが、その後、Appleから誘われてアメリカに渡られた。
今日のお話では、とにかく来いというので行ったけど、iPhoneの日本語入力の開発が仕事だというのは向こうに行ってから知ったそうだ。
昨秋、帰国しこの4月から慶応SFCの教授に就任されるそうだ。来週じゃん。
だからまだ名刺なし。
それにしても慶応はSFCのXDプログラムといい、日吉のKMDといい、デザイン界の重鎮、大御所をごっそり囲い始めた。2次会に向かう途中で、巨人軍のようですねえ、とこの話増井さんとしていたら、清原ばかりいてもねえ・・とご冗談を・・。
講演の中で、増井さんは「アイディア」を思いつくたびにドメイン取得」したり、その「アイディア」を実装し実証実験している数々の事例を紹介した。
本棚.org、 地図帳.org、QiuckML、単語帳.org、Gyazo、FeedTV、なぞなぞ伏字サービス、なぞなぞ情報公開 ・・・。
そのサービスの特徴は、「ユーザー登録なし、パスワードなし」で「単純で有用なもの」を目指していることだ。
自分では流行る!と思っていた地図帳.orgが流行らない理由を、「自慢にならないのがいけないんじゃないか」と結構冷静に分析されていたのも興味深い。
発想の源は、講演後の質疑の中で、「自分の体験であり、自分のできないことをつくる」「得意なことはやらない」と応えていた。
そして「Appleでは、とにかく説得するのが大変。黙っていると単なるアホとしか思われない」「ユーザー要求を見て、モノを作るのはダメ。学生20人に評価させたくらいで判断してもダメ。2万人くらいやってデータを蓄積しないと。そういう反応がすぐあることがいいので、秘密主義のAppleでの開発は辛かった」という話までされた。
「何も学習しないでできるようになるなんてありえない」「直感というのは慣れているだけ」「ちょっと努力することをいかに上手く見つけるか」という言葉や、「ネタ」と「発明」を明確に区別している一貫した姿勢から、ユーザー調査や評価の現象からだけではなく、本質からの発想と実装による検証を繰り返すことで、最終目標であるinvisible computingを実現しようとしていることだ。
とにかく、我々にとっては天才的なヒーローのような人なのだが、そういう方が気さくにお話される中の示唆を見逃してはいけない。
最後に面白かったのは、「発想(アイディア)というのは、如何に知識という引き出しをもってるか」が重要で、そのたくさんの引き出しや昼間のゴチャゴチャになった頭の中から「パッ!」と閃きのように解ける瞬間はとにかく「寝ること」と結論づけていたこと。ちゃんと、経験に基づく事実や脳科学的な根拠もあっての言葉だ。
「IDEOのように何人かが1週間でアイデアを出すというやり方は信じられない」という発言もあったが、そこは計り知れない好奇心とアクティビティで一人観察、一人プロト、一人検証をできてしまう天才とは比較してはいけないのだ。集合知から出る発想は、「寝ること」と同じ効果があるのかもね、と納得されていた。
その後のオープンディスカッションの会場では、 首都圏のみならず、札幌、京都などからも参加したいろいろな人との会話を楽しむことができた。学生さんのプレゼンをほとんど見なくて失礼しました。
罪滅ぼしではないけど、帰りの地下鉄の中でM工大(4月からTT大)のF君のプレゼンをアサノ先生と聴きました。酔っぱらいのおじさんが学生をいじめているようには見えなかったと思いますが、プレゼンした学生も偉いが、鋭い講評をした上平先生も凄かった。最終の急行電車の中が寺子屋みたいになっちゃて、昨日は最後まで面白かったなあ。
関連情報
Smile Experience(山崎先生のblog)
DESIGN IT! w/LOVE(棚橋さんのblog)
kamihira_log(上平先生のblog)
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