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2011年7月26日 (火)

本郷館が消える

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本郷館。
1905(明治38)年創建、築106年になる木造3階建て。部屋数76室を擁する現役の下宿屋であった。 つい先日まで。
場所は東大正門からすぐの一本入った住宅街。本郷台地の高台の端に位置する。
元々の施主は、岐阜県の西美濃の酒造業を兼ねる庄屋で、地方出身の裕福な家庭に育った東大、芸大の学生を対象とした賄い付きの下宿屋だったそうだ。建物のある場所は三河の岡崎藩の江戸屋敷跡地というから、 名古屋出身の私にとっても何か少なからず縁があるように思えてならない(ないけど)。
関東大震災にも耐え抜き、第2次世界大戦の東京大空襲の戦火も潜り抜け、 3.11でもびくともしなかった現時点でのほぼ唯一の大型木造共同住宅だ。 下宿屋のメッカ本郷でもシンボル的存在であった。
日本独自の集合住宅である賄い付きの下宿屋そのものがほぼ絶滅しているのに、入居希望者が引きもきらない人気物件であり続けたことは奇跡的であり、現実には本を買って帰ると傾くからと管理人に怒られる、パソコンを使うには他の全ての電化製品をオフにしないとブレーカーが落ちる、などなどエピソードに事欠かない。
一畳4000円の家賃、シャワー、トイレ、台所共用という都会のど真ん中にあって超エコ、最先端のロハスな生活を体験できる空前の空間だ。
近代建築史、都市景観、生活学などなど様々な面で大きな価値があるということは誰も異論は無いだろう。

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最近 本郷に行く機会が多いのだが、朝直行して午後はすぐに会社に戻ったり、午後は帰る頃にはすっかり暗くなってしまって、界隈を散策することもほとんどない。
が、最近Twitterで 本郷館が壊されるということを知って、建物探訪が趣味の私は今のうちにぜひ目に納めておきたいと思っていた。
今日、たまたままだ日があるうちに講演会が終わったので、帰社する前にほんのわずかな時間寄り道して訪ねてみた。

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16時過ぎ、数人のいろいろな世代の人があちこちから眺め回し、カメラやケータイに映像を収めている。 なんだか親近感をお互いに覚えて自然にそんな人たちとつい会話をしてしまった。 自転車でやってきていたおじさんによると、最後の住民3人が立ち退きの裁判に負けて強制退去させられたのが今月の1日で、 8月1日から解体工事が始まるんだそうだ。え〜〜! 今週末までが見納めだったのか! 幸運というか急に切なくなってきた。
立ち入り禁止の札が立つが、この札は解体前から歴史的建造物の内部を見ようという輩が全国からやってきて 勝手に建物の中に入ってくるのでずっと前からあるとのこと。
木造のメンテナンスに防火的に法律上は不適格建築なのでそのリスクに現在の家主は建替えを決意したのだろう。路線価4億5000万の土地に、旭化成のへーベルハウスのワンルームアパート36戸に建て替わるそうだ。
不適格だからこそ、立て替えたら消滅してしまうのだからこそ、多大な労力をかけてもこの状態で維持保存することに大きな意味があるはずなのだが。

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よく見ると、御影石の門柱や敷石にはガムテープで保存と貼ってある。
売り飛ばすのか?
明治村かたてもの園への移設を検討しているのか?

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最後まで諦めずに守ろうと活動していらっしゃる方々もおられる。
明治村館長を発起人に保存活動が展開されているようだが持ち主の反応は無いそうだ。
先のおじさんも「まだ万分の一で何かが起きる可能性はあるんだよ。あなたも写真の撮ったらTwitterでもブログにでもアップして広めてくださいね。」と。
お、この人ただ者ではなさそうだった。

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この姿を拝めるのもあと5日。

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周辺では「わたしの本郷館」という企画展が街角で開かれていた。

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この八百屋さんも閉店してました。。

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3階からは富士山を眺めることができたんじゃないかなあ。

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