
薄曇りで温かい土曜日の午後、公園の落ち葉が美しい。
デザインプロセスの合理性や貢献を論理的に説明し、
明確な成果を示したり、未来や可能性の明確な方向性を示すには?
モチベーションを高めたり、既存の枠にとどまらない成果を達成するための
チャレンジグな目標や新しいHowに気づくには?
今日は そんなヒントを得るために
第2回情報デザインフォーラムに個人的な勉強で参加してみた。
場所は横浜/山手ゲーテ座ホール。
週末の午後、みなとみらい線元町・中華街駅から急な坂を上ってたたどり着く港の見える丘公園は、カップルや結婚式の2次会に向かう正装のヒト達、観光客でにぎわっていた。
観光地としての山手ゲーテ座は知っていたが、
ここにこういうイベントでくることになるとは全く想定外であったし、
こういうことでもない限り
この建物が横浜の岩崎学園の所有であることも知らなかったろう。
こじんまりとした定員110名のホールは、
天井と床が木、壁が石材という天然素材の落ち着いた内装で、
室内楽に最適と思われる音響のホールだと思った。
今日はここで情報デザインに関する短い講演と
夏に開催されたワークショップの成果報告が行われた。
実は、大きな期待をもつことなく
ヒントが得られればいいくらいの気持ちだったのだが、
とても収穫の大きな5時間になった。
はじめに京都工繊大 櫛先生の
「リフレーミングとビデオエスノグラフィー」のお話。
ナイサーの「人の知覚循環」モデルの紹介から
観察→洞察がフレーミングの繰り返し→リフレーミングであること
そしてこのリフレーミングこそ
「次元の異なる意味の定義」であり、「デザインに必要な行為」であるという。
「リフレーミング」、これはいい言葉だ。
そしてビデオエスノグラフィーによるフィールドワークの具体的な事例や
Howは、一度ぜひトライしてみようととても参考になった。
続いて富士ゼロックスHIDの蓮池さんの
「観察とプロトタイプを通じたデザインイノベーション」のお話。
具体的な内容は「人とドキュメント」の未来のデザインに詳しくある。
インハウスのデザイナーとして
公の場で話せることの制約のもどかしさもよくわかる。
またヒト、ビジネス、テクノロジーの三位一体の企業活動において
「いろいろ対応できる力をデザイン部門で持っていることが重要」
という締めの言葉に大きく共感してしまった。
学生さんにはちょっと実感湧かないだろうなあ・・と思う。
そして今日の主食。
横浜ワークショップに参加した7チームのうち、
6チームから成果報告がそれぞれ持ち時間5分ほどで
次々と行われた。
学生さんだけのチームの発表は、言葉使いからはじまり
何をいいたいのかまで 聴衆側が汲み取らねばならないことが多く
もどかしい場面も多かったが、
チームメンバーに社会人が入っていたり、発表が社会人や院生のチームは
それなりに面白い視点と
それをきちんと着地させようという姿勢が明らかに見えた。
これは勉強の場だから、成果であるインフォメーショングラフィックスのクオリティをとやかく言うのではなく、フィールドワークと成果までのプロセスを聴いて、そこで彼らが気づいたり、軌道修正した足跡を辿ればいいのね、と思って聴いていた。
しか〜〜し、この発表の後、
このワークショップの講師陣10名による一人5分ずつのコメントが
それぞれの立場、視点を端的に示していて、とても興味深いものだった。
短いコメントにこのワークショップの意味や課題、
そして今日の収穫が集約されていたと言っても過言ではなかったのだ。
それを忘れないうちに記録しておく。
1番手はチューブグラフィックスの木村さん。ユーザーの期待を超える意外性、面白さ、なるほど!という結果になっていないという厳しいご指摘だった。プロとして一定のクオリティの結果(今回の場合インフォメーショングラフィックス)を出してこそ意味があるという立場で、自身が講師としてアドバイスしたことがどうしてこのような丸まった成果になってしまったのか、講師の役割は何なのかを問うていた。凄い方だ。
イードの棚橋さんは、最近興味を持っていらっしゃる「用の美」の話をされてから、今回のポスターは、成果であるインフォメーショングラフィックスより「コンセプト」の方が端的に纏まっている、と思ったと。みんなに伝えたいことが、結果ではなく、コンセプトを作るプロセスだったからではという指摘だ。
はこだて未来大の寺沢先生の短い感想は、私の頭の中をかなりすっきりさせてくれたコメントだった。「火事場の馬鹿力の魅力」というものものも確かにあるが、本来「ちゃんとした綿密なフレームを計画した上でのリサーチ」があってこそ、ヒトを感動させることができるのだ、と。これって プロとアマの明確な定義にも当てはまるのではないかと私は思う。寺沢先生のおっしゃることは相変わらず深い・・。
櫛先生は、「画期的なワークショップだったのではないか。賞賛すべき」という参加者全員への労をねぎらわれていた。事実、私もそう思う。
武蔵工業大学の小池先生は、フィールドワークとは、「見た」だけではなく、参加者になってデザインの力で課題を解決して行くことが本来の醍醐味だという話をされた。
短い時間のフィールドワークだったけど、観察するだけでなく地域のヒトと話をすること、コミュニティにアクセスし、コミュニティに関わり、実践していくことを期待したい、と締めくくられた。同じ大学の研究室出身者としていたく共感。そう、これを実践していきましょう!
今日が入試だったということで、遅れて会場に駆けつけたばかりの横浜デジタルアーツ専門学校の浅野先生は、このワークショップに至る経緯、紆余曲折を詳しくしてくださった。箱を作るだけでなく、魂まで入れた舞台裏のご苦労がよくわかった。「走り出せば、何とかなる!」という言葉に共感しつつ、走り出すことの大切さと、いやいや、このイベントやフォーラムの活動は、数年後、10年後に振り返った時、とても大きな意味を持つと思った。
そして、体調を崩されて今日出席できなかった多摩美の吉橋先生の代理で、急遽壇上に呼ばれてしまった専修大の上平先生も 短くこのワークショップの熱気を語っておられました。
そしてトリを千葉工大の山崎先生がつとめ、「デザインはコンテンツとフォルムの関係を作っていくこと」というポールランドの言葉を紹介し、「未来は解らない、未来は創っていくもの」「変化していくことと、そこに参加していることが重要」と総括されていました。
その後、懇親会では、ワークショップのポスターも見ないで缶ビール一本片手に、上平先生、裏方を務めた武蔵工大の学生さん達や久々再会の元学生さん(今や立派なインターフェースデザイナー)とたくさん話をした後、浅野先生の計らいで講師陣の反省会に参加させていただいた。
夜の港の見える丘公園を通過してフランス山の小道をくだるおじさん集団は怪しい・・。
こういうメンバーだからこそ お互いの立場を尊敬し合い、
言いたいことを言い、高めあって行く楽しさが
このフォーラムの活動を支えているんだなということと
異種多才の人材交流から新しい流れが生み出されていくことを実感したのであった。